住宅ローンに付随するものとして、団体信用生命保険(団信)と特約の生命保険を選択できる仕組みになっています。
三大疾病、がんに対応するものまで幅広く選ぶことができます。
銀行によって提携している保険会社が異なります。
・カーディフ損害保険株式会社
・損害保険ジャパン日本興亜株式会社
・クレディ・アグリコル生命
などと契約をすることになりますが、それぞれ保障内容や適用内容が変わってきますので、しっかりと確認しましょう。
団体信用生命保険
通常の団信は、死亡時・高度障害の場合にのみ残債が0円となる仕組みです。
多くの金融機関は無償でついてくるサービスでもありますが、フラット35の場合は選択制になっています。
住宅ローンの残債がなくなる性質から、定期保険(死亡保障)として利用することもできます。簡単ではありますが、団信と定期保険の差をシミュレーションしてみましょう。
通常団信
【条件】
年齢30歳
借入金5,000万円
金利:0.475%
期間:35年
30歳~39歳 | 40歳~49歳 | 50歳~59歳 | 60歳~69歳 | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|
保証額 | 5,000万円 | 3,500万円 | 2,300万円 | 800万円 | |
月額支払 | 7,950円 | 9,310円 | 11,523円 | 8,568円 | |
契約期間 | 10年 | 10年 | 10年 | 5年 | |
総支払額 | 95万円 | 111万円 | 138万円 | 51万円 | 400万円 |
支払元本 | 1,350万円 | 1,410万円 | 1,480万円 | 760万円 | |
支払利子 | 206万円 | 140万円 | 72万円 | 9万円 | 430万円 |
上段が定期保険の保障額と支払金額で、下段が住宅ローンの支払い元本と支払利子になります。
生命保険は、10年区切りで見直しを図る計算とし、住宅ローンも10年刻みの表で作っています。
1年目:元本分の5,000万円の保障が必要です。
11年目:元本1,350万円を返済しているため、差額の3,500万円を保障
21年目:元本1,410万円を返済しているため、差額の2,300万円を保障
31年目:元本1,480万円を返済しているため、差額の800万円を保障
定期保険の場合は、細かい数字で設定が出来ませんので数百万単位で多少のズレがありますことご了承ください。
表の説明は以上の通りですが、定期保険の場合は住宅ローン完済時までに約400万円を支払っています。
住宅ローン(団信付き)の利子の総支払額は約430万円です。
住宅ローンの利子を払っていることは確かですが、定期保険の掛金と同額かつ同じ保障を得られていることが分かります。
もちろん、住宅ローンの場合は残債が0円になるだけで、お金が入ってくるわけではありません。お金の使い道としての自由度は低いですが、住居は家族を守る最後の砦で、失うリスクをゼロに近づけるための制度です。
なお、フラット35の場合は上乗せ金利をするメリットがあるのでしょうか。
条件は、先ほどと同じで元本5,000万円とし、上乗せ金利を0.3%とします。
金利 | 支払利子 |
---|---|
0.475% | 430万円 |
0.775% | 710万円 |
35年間の支払利子の差額は280万円です。
住宅ローンのために定期保険をかける場合の支払額は400万円でしたので、0.3%の上乗せ金利を支払っても100万円以上もお得になる計算です。
費用面だけを見れば、健康で定期保険をかけなくても済むのが一番安く済むのは当然ですが「家族を守る」ためのリスクヘッジは十分検討してください。
なお、住宅ローン以外でも一括でまとまったお金が欲しい・・・!であれば、定期保険を吟味して契約を締結しましょう。あくまで住宅ローンには定期保険・死亡保障の側面があることを理解して頂ければと思います。
日本人によくある過剰な保障の保険貧乏になりかねませんからね。
がん保険特約
より充実した保険として、三大疾病やがん保険特約があります。
がんに罹患した場合や特定の手術を受けたときなど、条件は様々ですが、こちらも住宅ローンの残債が0円になる制度です。
適用される条件はかなりの重症度なので、働くことができない状態になっている可能性が高いです。そうなると収入も減少しますし、不安定な職業であった場合は収入がゼロになる可能性も否定できません。最悪の場合、住宅の売却です。
それを防ぐためのリスクヘッジとして三大疾病やがん保険特約に加入するのですが、上乗せ金利が中々高いのです。
0.2%~0.3%の上乗せ金利が多いのですが、先ほどと同じように条件を借入額5,000万円で35年ローンとしてみましょう。
金利 | 支払利子 | 月々 |
---|---|---|
0.200% | 177万円 | 4,214円 |
0.300% | 270万円 | 6,428円 |
総支払利子はこのぐらい変わり、月々の支払額も4,000円~6,500円と計算されます。
これは高いと感じるでしょうか?安いと感じるでしょうか?
5,000万円のローンに対して約200万円~300万円で保証してくれるのは、良い制度のように見えますが、個人的にはどうなんだろう?と思っています。
その理由は年数が経つほど保障額が減る上に、一番保障して欲しい時期には住宅ローンが完済され、保障契約がなくなる可能性が高いからです。
がんの罹患率
生命保険会社は2人に1人の確率でがんになります!
保障が必要なので是非入りましょう!
というのは謳い文句で勧誘にあった方は多いのではないでしょうか?
2人に1人と言われたら不安に駆られてしまうのは仕方ないですよね。その根拠は何なのかでしょうか。
年代別罹患率
確かに数字上であれば2人に1人の確率というのは合っています。では、年代別はどうでしょう。
こちらのグラフをご覧いただくと、がんの発症が飛躍的に伸びるのは60歳以上からで、男性は特に急上昇していきます。
女性は30歳以上から徐々に増えていく傾向にあります。
女性特有のがんですね。乳がん・子宮頸がん・卵巣がん等が当てはまります。
男性の場合は前立腺がんが60歳以降、急激増えることが多いです。
数字のマジック
統計的に見ますと罹患率が、60歳で7%、70歳で21%、80歳で41%の方が、がんを患います。
なので2人に1人という数字は間違っていませんが、数字のマジックとは恐ろしいものです。
住宅ローンに限ってみてみますと、基本的に60歳~65歳で完済する方が多いのですが、がんを保障して欲しいのは60歳以上です。
そして一時金だけでなく、その後の治療費を保障して貰いたいのです。
放射線治療や手術は大掛かりになりますから・・・。
なので、保障して欲しいタイミングで契約が切れてしまう住宅ローンの特約の存在意義って何なんだろう?と常々思います。
がんの保障を求めるのであれば住宅ローン特約ではなく、通常の生命保険のがん特約に備えた方が保障の幅が広がります。
保障の優先順位を
一番のリスクヘッジは、住宅ローンのがん特約と一般の生命保険のがん特約の二つに加入することですが、保険に入れば入るほど家計が圧迫します。
ご自身がどういうリスク要因に備えたいのか、何歳ぐらいまでは高額な治療費を受けたいのか。優先順位は人それぞれです。
喫煙者であれば、肺がんの罹患率や若くして治療費も多くかかる可能性もありますし
遺伝的になりやすい病気をすでに把握されている方もいるでしょう。
金融が苦手。と思う方は自分で調べるのは困難ですので、専門家のファイナンシャルプランナーにご相談されるのをオススメします。
FPの方にも精通している分野・精通していない分野がありますので、複数の方とお話するのも良いかもしれませんね。
せっかくの楽しい住宅です。
住宅ローンと向き合いながら、保障も備えつつ、幸せな生活を築くためのキッカケになれば幸いです。