・個人で事務所を構える建築士
・組織に属する建築士
自由度とブランド力の差が顕著に表れ、前者は個人が、後者は組織が秀でています。
相性の問題性
家を建てる場合の労力は想像している以上にかかります。
打ち合せの連続になりますが、個人建築士を選択した場合は更に忙しくなることは必至です。その時に人間性と言いますか相性に相違があった場合、信頼関係を築くのはどうなるでしょうか。
HM建築士
最初に家を建てよう!と思った場合、モデルルームへ足を運ぶ方が大半だと思いますが、残念ながらそこに建築士の方を見かけるケースはあまりありません。
一番最初の接客担当者は「営業さん」です。
営業担当者の中にはファイナンシャルプランナーやインテリアコーディネーターの資格をお持ちの方もいますし、自社の強みである特色を伝える技術は抜きんでています。
しかも接客対応のプロでありますから、言葉の使い方・絶妙な距離感での接し方に惹かれることも多々あることでしょう。
あの営業さんの対応は本当に良かった!あのHMで建てて貰おう!
と思い、いざ契約してみると、営業さんは担当から外れ建築士・設計士にバトンタッチされます。
これは当然のことで、営業さんが設計できる訳がありませんから契約が取れたら次の顧客を獲得しに時間を費やします。
もちろん、完全に外れるわけではないのですがメインは建築士になります。
さて、問題なのがここの建築士さんです。
HMも商売ですので、それなりの接客はして貰えますが、全く気が合わない可能性も否定できません。組織力は申し分ありませんが、人と人の信頼関係をゼロからスタートする覚悟は必要です。
個人建築士
その点、個人建築士の方はどうでしょうか。
人それぞれではありますが、基本的に構造や設計に対する知識全振りの人が対応されます。
お世辞にも接客が得意ではないだろうな。というのが見て分かる方も大勢います。
しかし、空間把握能力の高さ、プランニングの上手さ等は非常に長けています。
設計事務所は数多くありますが、モデルルームに伺うように、直接門扉を叩きます。
No | 内容 |
---|---|
1 | 事前にその建築士の作品を見て共感を覚えるか? |
2 | 初回相談の時の相性はどうだったか? |
3 | 要望と予算を伝えた後の感触はどうか? |
4 | この人に任せたいと思えるか? |
特に4番目の任せたいと思えるか。が重要です。
住宅は安らぎの場で安全第一です。地震で倒壊・火事で逃げ遅れ。等のリスクもありますので大げさかもしれませんが、命を預ける訳です。
そのため、国は個人の生命・財産に重大な影響を及ぼすものには国家資格で制限をかけています。
この建築士を選べる。というのはHMでは選べない大きなメリットです。
反面、HMはそこを組織力・ブランド力でカバーをしていることになります。
自由度の違い
日本の家の耐用年数は約30年と言われています。
欧州などは70年以上も持ちますが、日本の独特な高温多湿が耐用年数に影響を与えています。
ですが、それでも30年以上の付き合いになる住宅です。そして毎日です。
その住宅に対する自由度の違いはどうでしょうか。
HM建築士
注文住宅ですので、ある程度の要望を叶えることが出来ますが社内の規格も存在します。
更に取扱メーカーもありますので、設備の選択肢も必然的に狭まります。
企業ごとに構造がありますので奇抜な空間は望めません。
大きな吹き抜けに大きな窓。空を眺められるお家に住みたい!
と考えても社内規格に沿っていないと難しいです。仮に出来たとしても規格外対応として金額が跳ね上がります。
設備面でも、TOTO・LIXIL・クリナップ・タカラスタンダード・Panasonic等から好きに選べるわけではありません。
提携先にクリナップがない場合で採用しようとすると仕様外として、これまた金額が跳ね上がります。
ただ、設備面であれば代替品が多いことからデメリットはあまり感じないかもしれませんが海外製は別問題です。
例えば食洗機です。有名なのはミーレ社・ガゲナウ社になりますが、これを導入するのは中々難しいです。
日本のキッチンの規格に合わないため特注対応になりますので、これまた金額が跳ね上がります。
個人建築士
HMのように規格が存在しないため、本当に自由度が高く、一番の大きなメリットは空間だと思います。
この施主・家族が愉しい空間を送るためにはどうすればいいか?
そのためにはどのような構造・間取り・設備にするべきか。とこれまでの知識・経験から導いてくれます。
施主が要望するのは「どういう生活を送りたいか」をメインに考えれば良いと思います。
施主の方も色々と勉強して知識をつけていきますが、そんなものはプロの設計士に言わなくても当然分かっています。
断熱材はセルロースファイバーで、内装には漆喰や珪藻土を組み込んで欲しくて。
あ!間取りの位置もこんな感じで!
収納の壁はここに造作して欲しくて、バルコニーはインナーで!
などのように要望するのは、設計事務所に委託した意味が薄れます。
もちろんお客様ですので要望があればそのように対応をしてくれるかと思いますが、建材や部材を単体で考えてもあまり意味がなく、組み合わせで効果が発揮するものもあります。
要望を伝えるのは部材等を詳細に指定するのではなく、どういう生活を送りたいか。を伝えるべきです。
共働きで室内干しをすることが多いので湿気が気になっています。
リビングとキッチンが一体型になっているような感じで抜け感が欲しいです。
アウトドアが好きでキャンプ用品がいっぱいあります。収納力があると嬉しいです。
こういう伝え方であれば、建築士の方は予算内でどういう構造にするべきか、部材はどうするか。愉しくなれる空間の構築に入ります。
湿気対策であれば漆喰・珪藻土もありますが、空気の流れも重要になってきます。
どのような通気計画をして湿気対策をするのかを考えるのが建築士です。
こういうのは経験を積んだプロに任せるべきです。そのための設計監理料なのですから。
打ち合わせの違い
建売住宅と違って打ち合わせは何度も行います。
内容もさることながら、場所の違いもあります。
HM建築士
効率が重視されますのでプラン決定は1~2ヶ月で決めるケースが多いです。
そんなに早く出来るの?と不安になるかもしれませんが、これは規格が決まっているが故の早さです。
契約後、打ち合わせの場所はモデルルームからプランを練る施設に移動するケースが多いです。
そこには様々な建材や設備が用意されていて、壁紙はこれにしよう。フローリングはこれにしよう。とトントン拍子で決めていくことになります。
これはHMの大きなメリットです。悩む必要がありませんから。
更に松竹梅のグレードも提示されていれば大体の場合、中間以上を選びますからハズレも少ないです。
基本的に満足度は非常に高く維持されることが多いです。選んだものを後悔しても遅いですし、建ててしまえば「比較」なんてできませんから現状に満足するのが大半です。
個人建築士
設計事務所によって対応は異なりますが、個人設計の場合は施主の家に伺うケースが多いです。
家の中が散乱していて恥ずかしい。中を見られたくない。と思うかもしれませんが、生活を見てもらう。ということが非常に重要です。
この人はどういう生活スタイルなんだろう?キッチンの使い方、テレビの大きさ、家電や家具のバリエーションはどうなんだろう?
と生活スタイルを把握しにきます。
どういう空間を作ってあげれば、この家族は愉しく過ごせるだろうか?と頭の中でプランがスタートされます。
一昔前であればハウスメーカーも自宅に伺っていましたが、その場合は施主の資金力を見ることが多かったようです。
この方にはグレードの高い物をオススメしよう。等といった営業です。
個人建築士でもそれがないとは言い切れませんが、基本的にはその人の生活を見てプランを計画していくことに大きな違いがあります。
時間は非常にかかる
どちらの注文住宅でも時間は非常にかかります。
設計の段階でもそうですが、着工から竣工までの時間も違います。
HMであれば3ヶ月で建つところ、設計事務所の場合は半年以上というのが基本です。
規格が揃っているから短く建てられますが、チェック体制が利きにくいことも確かです。
設計事務所には設計監理という監理業務も持っていますので細かくチェックするため建築に時間がかかります。
時間がかかるというのはデメリットかもしれませんが、部材によっては一定時間以上、乾燥させなければならない物も存在しますので、無理に工期を短くして中途半端な施工になるより、しっかりと見てもらった方が良いとは思うんですけどね。