変動金利と固定金利のどちらかを選択するかは非常に悩まれる問題です。
一昔前は固定金利が大多数を占めていましたが、2020年では半々の状態のようです。 それぞれのメリットとデメリットについて考えてみましょう。
固定金利
安定度が抜群なのは固定金利です。
経済情勢に関わらず、支払金額が一定なので資金計画が立てやすく家計のやりくりがしやすく人気も非常に高いです。超低金利の時代でありますので、これから金利が上昇していくと予想して選択される方も多くいらっしゃるでしょうね。
もしも景気が上向きになり金利が1%上昇しても、固定金利であれば支払額は不変ですのでお得感があります。何より不確定要素が排除されるメリットは非常に大きいです。
ただし、注意しておかなければならないこともあります。
当初固定の金利について
金利の審査を行う際に、当初5年間・当初10年間と期間を定めて金利が固定されているパターンと、全期間固定のパターンがあります。
当初何年間の場合は金利が比較的に低く設定され、全期間固定は高めの設定になっているのが普通です。
全期間固定の場合は支払総額が完全に確定していますので安定的ですが、当初固定の場合は5年後・10年後の優遇金利から概ね1%程度の金利が上昇することが多いです。
例えば0.575%であれば、10年後には1.575%になる計算になります。
この1%の金利は非常に大きいです。
仮に以下の条件だった場合のシミュレーションをしてみましょう。
項目 | 条件 |
---|---|
ローン期間 | 35年 |
借入元本 | ¥50,000,000 |
当初金利 | 0.575% |
10年後の残債期間25年が25年で、金利が1%上昇した場合の支払う利子の差はどの程度になるでしょうか。
10年間の支払額 | |
---|---|
元本 | ¥13,274,618 |
利子 | ¥2,500,191 |
残債元本 | ¥36,725,382 |
金利計算の基本となるのは、残っている元本の¥36,725,382円です。
金利 | ||
---|---|---|
項目 | 0.575% | 1.575% |
25年間の利子 | ¥2,711,639 | ¥7,727,364 |
約3,700万円の元本にの金利は約500万円になりますが、この金額の違いを見てどう感じますか?
毎月の支払額の差は
0.575%:131,457円
1.575%:148,176円
約17,000円の差で、トータルで考えると高級車が買えるほどの利子を払う計算になります。この総支払額の差に愕然としませんか?
なお、5,000万円を35年で借りた場合で金利が1%違う場合の利子総額の差もみてみましょう。
0.575%:5,211,831円
1.575%:15,073,023円
たった1%の金利の違いでもこんなにも利子の金額が変わってくるのです。
この解決策として10年経ったら借り換えしよう!と考える人もいますが、乗り換えコストも意外と重くのしかかるのです。
乗り換えコスト
乗り換えコストとは、既存の銀行から、他行へ変更するに要するコストのことを言います。
例えば、楽天銀行からSBI銀行へ変更しようとする例で考えてみましょう。
まず、土地・建物には楽天銀行が抵当権を設定しています。
この抵当権を外し、新たな借入先であるSBI銀行に抵当権を設定しなければなりません。登記費用が新たにかかることになります。
また、最初に住宅ローンを組んだ際に、融資手数料型(2.2%)を選択している場合は、残債に対する保証料が返ってこないので注意してください。
もしも保証料型であれば残債に対しての保証金額が返還されますので気にする必要はありません。
そして乗り換えに当たって手続き作業が発生しますので、時間が拘束されます。
これらの乗り換えコストを踏まえても、新たな銀行への借り換えた方が金利面で優遇されるかをシミュレーションすることが不可欠です。
これを面倒と感じる方が多く、優遇金利がなくなっても引き続き同じ銀行で住宅ローンを継続することが多いです。その金額差が先ほどの例で言うと500万円です。
銀行はまず新規顧客を取るために「当初」のメリットを強調します。
最初さえ獲得してしまえば乗り換えが煩雑なのでその後も美味い汁を吸えるという訳です。これと似たようなものは、携帯電話・通信回線・電気・ガスなどで多いですね。
借り換え前提
当初固定金利を選択される場合は、借り換えを前提にした方が良いかと思います。
そして、保証料を一括払いする形式で契約することをオススメします。
例えば5,000万円を融資手数料型(2.2%)にしますと110万円の支払いになり、保証料型でも基本的にはほぼ一緒です。
しかし、保証料型であれば10年後の残債が4,000万円であれば約80万円が返ってくる計算になります。
4,000万円分の保証をしなくても良くなるためですが、新規に契約をする住宅ローンでも新たに保証料を支払う必要があるため、そのまま80万円をスライドさせる形になります。
しかし、融資手数料型の場合は110万円を支払ったら返金はありません。
融資手数料型の特徴として、銀行が保証料を負担する代わりに手数料を2.2%徴収するようになっています。繰り上げ返済をすればするほど、借り換えをする度に、支払う必要がなかった保証料をそのまま銀行が召し上げる仕組みです。
なので4,000万円を借り換えした場合は、新たに融資手数料(2.2%)がかかるため約97万円の費用が発生します。
この仕組みを理解していないと手数料を支払うだけの銀行にとって良いお客さんになってしまいますのでご注意ください。
借り換えを考えていないのであれば、当初の優遇金利が外れた後の支払金額もしっかりとシミュレーションを忘れずに行ってください。銀行にはFPの方が多くいらっしゃいますので積極的に相談することをオススメします。
変動金利
変動金利は経済情勢により、店頭金利が変わった場合に支払金額が変動するのが特徴です。
一番のメリットは金利が非常に低いことが挙げられます。
ネット銀行の場合、0.0415%といった驚異の数字を出しているところもあります(2020年1月時点)
審査を経て優遇金利が設定され、それ以降は店頭金利から優遇金利が引かれ続ける仕組みになっています。
例えば店頭金利が2.475%であり、優遇金利が2%であれば0.475%になります。
経済情勢が変わり金利の上昇に伴い店頭金利が3.475%になった場合は、優遇金利2%を引き1.475%の金利となります。
金利は毎月変動しますので、支払金額の変動リスクが生じます。
安定志向の方は変動リスクを嫌う傾向にあるため固定金利を選びがちですが、経済の仕組みを考えると変動金利の利点は大きいです。
金利上昇リスク
それでは金利が上昇するというのはどういうことでしょうか。
簡単に言いますと好景気になり、物価の上昇、資金の需要増に伴い、金利が上昇するのが一般的な理由になります。
たくさんの企業がお金を使いたい状態です。建物や工場を新規に建設したり、大型の機械を作ったり、研究したり、とお金がドンドンと回る状況です。
そうなると、銀行は貸し出せるお金のストックが徐々に減っていきますので需要があるのであれば金利を上昇させよう!と動くわけです。
それに付随して、住宅ローンの金利も上昇します。
しかしながら、金利が上昇するというのは悪いことばかりではありません。
景気が上向いているということは給料の上昇、所得の増加が見込めるわけです。
元々資産をお持ちの方であれば、株価の上昇・配当金の上昇・不動産価格の上昇によって資産の大幅増加が望めるタイミングになります。
給料の上昇はタイムラグがありますので辛い時期になるかもしれませんが、金融資産の上昇は素早く反映されるため、金利上昇のリスクはメリットにもなりえます。
会社員で手を出しやすいのは積立NISAやiDecoですね。こういった金融資産の運用を行い、金利上昇に伴う住宅ローンの支払い金額の増加を金融資産の増加で相殺し合えば、金利の上昇は何も怖くありません。
金利減少リスク
逆に金利が減少した場合はどうでしょうか。
日本の今の経済状況からすると金利が減少し続けるというのは考えにくいですが、金利の減少に伴う変動金利のデメリットはありません。
ただし、金利が減少しても支払金額は基本的に変動しません。
金利が減少した場合は、店頭金利を下げるのではなく「優遇金利」を下げる方法を取るためです。
店頭金利の2.475%は変わらず、優遇金利を2.1%にするなど新規顧客に対して優遇することになります。
10年以上前に住宅ローンを契約した人たちで、金利が下がっているのに支払額が変わらない!と言うカラクリはここにあります。
店頭金利2.475%は不変のままで、10年前の優遇を1%と仮定しますと
適用金利は1.475%です。
金利の減少に伴い、変動するのは前述した通り「優遇金利」ですので、
2.475%から優遇金利2%に切り替わり、適用金利が0.475%となるわけです。
金利減少のメリットがあるのは「新規顧客」のみであり、既存の顧客は自動的に金利が減少するわけではありません。
銀行も商売ですので、利益を確保するのは重要な経営課題です。契約した人の金利を下げて利益を自ら減らすことはしません。
その代わり上昇するときは否応なく金額が上がりますが(笑
この仕組みは仕方ないところがありますので、金利を下げたければ自分で交渉するしかありません。
別の銀行で審査をして貰ったら優遇金利2%出た。今の契約の優遇金利を2%にしてくれなければ借り換えを考えている。と交渉してみましょう。
固定金利と変動金利
金利の計算はやたらと難しいですが、仕組みを理解すれば簡単に計算できます。資金コントロールをする際は必須のスキルです。
難しければファイナンシャルプランナーの方に試算してもらうことをオススメします。
私の個人的な意見ですが、固定金利は金利上昇面では確かにメリットがありますが、減少面ではデメリットになってしまいます。
変動金利の場合は、減少すればメリットが高く、上昇した場合でも保有している金融資産の運用をしっかりとコントロールしていれば何らデメリットではありません。
逆に安くお金を貸し続けてくれてありがとう!と思うぐらいです。
住宅を購入するにあたって、頭金を多く入れれば入れるほど金利の支払いは減るわけですが、その頭金を入れずに限度いっぱいまで住宅ローンを借り入れて、浮いたお金を運用に回した方が遥かに効率的です。
もちろん、資産運用に興味がある方のみになりますので、自分のライフスタイルに合わせて考えてくださいね。
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