あまりスポットライトが当たらない屋根材です。
話題に上がるのは太陽光パネルを載せるときでしょうか。設計中のお家には太陽光パネルを載せる予定はなく、屋根材をどうするか悩んでいます。
屋根の種類
屋根は形状から材質まで多岐に渡ります。
計画中の注文住宅はシンプルな形の片流れには決まっているのですが、屋根材の種類は本当に多いです。
瓦屋根
日本家屋といえば瓦といっても過言ではないでしょう。
素材自体も高価で加工も大変ですが、空気層が多いため断熱性が得られますし、防音性も高く雨音も気になりにくいです。
瓦は重いため耐震性は高くありませんが、地震の際は家が崩れる仮定で瓦が落ちるように設計されています。そのため屋根がなくなり軽くなり、倒壊を防ぐ。といった仕組みで、瓦屋根ならではの特権です。
窯業系サイディング
窯業系(ようぎょうけい)はセメントに繊維質を混ぜて強化・軽量化を図っている屋根材です。
メンテナンス性もさることながら、タイル調やレンガ調にも出来るという優れものの商品です。
パワービルダー等が手掛けた分譲住宅は、ほぼこの商品が用いられているほどのシェアを誇っています。
耐用年数は10年ほどで塗り替え等をしなければなりませんが、初期の導入費用を安く抑えられるので一番人気の屋根材です。
金属系サイディング
金属系の中で圧倒的なシェアを誇っているのがガルバリウム鋼板です。
金属板に塗料やエンボス加工を施し、より強化・軽量化を図っています。
中にはメンテナンスフリーと謡っている商品もありますが、通常の金属系サイディングであれば20年ほどで塗り替えが推奨されています。
ガルバリウム
狭小地で計画しているため、耐震性をどうにかクリアしなければならず、上に重いものを持ってくることが難しいです。
その時に軽さに定評がある金属系のガルバリウムが挙がりました。
(参考URL:屋根材・外壁材・雨といのケイミュー)
好みが分かれる商品で、好きな人はカッコいい!モダン!と思う方もいらっしゃいますが、デザインが気に入らない。という方も大いにいるかと思います。
私はそれぞれの素材同士が調和しつつ、周りとの街並みに馴染んでいれば良いと思っていますのでガルバリウムに抵抗はありませんでした。
防音性
ただ、金属製のネックの一つに防音性があり、雨が降った場合に金属特有のカンカンと音が響く欠点があります。金属材の宿命と言えるデメリットです。
中にはプレハブに住んでいるみたいという悪評を訴える人も出る始末です。
建築士の先生に音のことを相談してみたところ
「ガルバリウムは確かに雨音が響くこともあるが、屋根の下に緩衝材を入れれば軽減することが出来る。」
という回答でした。
次の打ち合わせ時にサンプル品も持ってきていただき、提示された緩衝材がゼトロ NV-αIIです。
ガルバリウムの裏側にアルミのようなシールを貼るだけで音が激減するという優れものです。
実際に持参していただいたサンプルを叩いてみたところ、音の響きが全然違う・・・!と驚きました。
音がなくなるわけではなく、響かなくなるといった感じで、全然許容範囲です。
耐候性
音が許容範囲であれば、次はランニングコストです。
一般的な屋根材であれば10年で塗り替え等のメンテナンスをしなければなりませんが、ガルバリウムは約20年で塗り替え等のメンテナンスが必要となってきます。
住居の寿命がどの程度持つかは判断が尽きませんが、生涯の塗り替え回数が2回程度で済むのであれば、コストメリットは高そうに感じます。
3階建ての狭小住宅なので足場の設置も大変ですし、出来る限り屋根のメンテナンスは避けたいのです。
可能であればメンテナンスフリーが希望ですが、ガルバリウムでそれを望むのは酷かもしれません。
ジンカリウム
ガルバリウム鋼板と似たような素材でジンカリウムという商品があります。
項目 | アルミニウム | 亜鉛 | シリコン |
---|---|---|---|
ガルバリウム | 55.0% | 43.5% | 1.5% |
ジンカリウム | 55.0% | 43.4% | 1.6% |
組成の割合は、ほぼ一緒で0.1%の違いしかありません。
ジンカリウムには自然石粒がついている商品があります。
特徴
表面に小さい石の粒がついているため、雨音が分散して響きにくい構造になっており、防音性に長けています。
また、石の粒には塗料を施せないため色合いが変化しません。塗料ですと紫外線等の影響から塗り替えをしなければなりませんが、石の場合はそのメンテナンスも不要です。
本当の意味でのメンテナンスフリーが望める可能性が高い建材です。
代表的な商品
日本でのシェアはそこまで高くなく、取り扱っている業者も限られています。
有名なのはエコグラーニ・ディプロマットでディートレーディングが取り扱っています。
有名メーカーではLIXILのT・ルーフシリーズぐらいしかありません。
海外でのシェアは高いのですが、日本でのシェアは残念ながら低いです。
海外製
そもそも国内での製造はされておらず、輸入品になります。
そのため取扱業者が少なくなっているのだと思われますが、海外では受け入れられても日本の気候にあった商品なのか?台風を始め、自然災害が多い気候に対応できているのか?
といった課題もありますし、そもそも日本での実証年数も少ないため採用されるケースがさほど多くないといったところです。
個人的には非常に優秀な屋根材だと思うので、是非とも採用したいと思うのですが、工務店さんの取り扱いが可能なのか不明です。
しかし、ガルバリウムであれば国内生産も行っていますので、何かあった時のフォロー体制が期待できるのは大きいです。
台風で屋根が傷んでしまった。すぐに修理をして欲しい。
こういう時に海外製の商品を取り入れていたら対応がどこまで迅速なのか?と不安が過ぎるのは確かです。LIXILぐらいの大手であれば安心はできるんでしょうけどね?
アスファルトルーフィング
最後に、屋根材と切っても切れない関係であるルーフィングです。
屋根の下に大きな防水シートを貼るわけですが、これまた選考過程で全く話題に上がらない商品です。
屋根は雨を家の中へ入れないように防ぐ役割を持っていますが万能ではありません。
風が吹けば隙間から雨水が侵入することは大いにあることです。それを防ぐための商品がルーフィングで、雨漏りの最終防衛ラインの守護神です。
アスファルトルーフィング940
最も安く、最も幅広く使われているものがアスファルトルーフィング940です。
アスファルトルーフィング22kgという呼ばれ方もするようです。
建売住宅の場合はほぼこの商品と言っても間違いないほどの普及率です。
耐用年数は15年ほどで、窯業系サイディングの耐用年数と似ているのでメンテナンス時にどちらも交換する。といった手法がとりやすくなります。
もちろん、変えないケースもあるのでしょうが雨漏りのリスクを考えたら設備を一新した方が良いかと思います。
ただ、15年というのは如何せん短いような気がしますし、屋根材を全て取り外す必要もあるので個人的には経済性に欠けるかな?と思っています。
改質アスファルトルーフィング
アスファルトルーフィング940の品質を向上させた商品で、耐用年数は2倍の30年です。
ここまであれば、雨漏りの心配も不要かと思いますし安心を購入するという意味合いは大きいかと思います。
性能としては耐久性が向上していますが、透湿性は確保できていないため湿気を外に排出する機能は持っていません。
透湿ルーフィング
改質アスファルトルーフィングに透湿性を持たせた商品で、耐久性も向上させています。
耐用年数は驚きの50年。過剰?!と思ってしまいますが、雨漏りのリスクは最大限なくしたいものです。また透湿性もありますので、屋根からの屋内結露を防ぐメリットがあります。
ただ、ルーフィングから屋根材までの間に湿気を逃がす道が必要なので、通気工法にしないと効果が発揮でないことが注意点です。
マスタールーフィング
ルーフィングの最上級の商品がマスタールーフィングです。
正直、オーバースペックを感じざるを得ませんが、60年以上の耐用年数を誇ります。
100年住宅を目指すのであれば導入の検討も良いかもしれませんが、お値段も飛び抜けて高いです。
価格表
大雑把ではありますが、商品ランク毎の価格表は以下のとおりです。
商品 | 単価(㎡) | 耐用年数 |
---|---|---|
アスファルトルーフィング940 | 200円 | 15年 |
改質アスファルトルーフィング | 400円 | 30年 |
透湿ルーフィング | 500円 | 50年 |
マスタールーフィング | 4,000円 | 60年 |
施工費を加味していない純粋な建材の単価になります。
アスファルトルーフィング940と改質アスファルトルーフィングは純粋に2倍の単価ですね。
15年後にルーフィングを施工し直すと、屋根に上るための足場・人件費などの費用も計算しますと改質アスファルトルーフィングが断然お得なのが分かります。
透湿ルーフィングでも単価はほとんど変わらず耐用年数が飛躍的に上昇していますね。
ただ、問題なのはマスタールーフィングです。高すぎで一般的な施主は手が出せません 笑
単価を㎡で出していますが、狭小住宅の屋根ですので大きく見ても50㎡程度になる予定です。
材料代だけを考えますと、アスファルトルーフィング940で1万円で、改質にランクアップさせたとしても2万なので、差額はたったの1万円です。
マスタークラスまで望むと20万円なので、さすがに手が出しにくいですね。
あくまで材料単価ですので施工費が異なることをご了承ください。
改質アスファルトルーフィングと透湿ルーフィングの施工金額も異なりますので一概に比較することは難しいかもしれませんが、それを加味してもルーフィングのグレードを上げても大幅な予算アップにならないと思われます。
私はアスファルトルーフィング940は絶対避けたく、改質・透湿ランクまで持っていく予定です。
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