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準防火地域の窓 結露対策を考える

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準防火地域 窓 結露

前回の記事(準防火地域の注文住宅 窓の価格が高すぎる。)では、窓の値段が高い上にU値の熱貫流率の性能も低い。と散々な状況をお伝えしました。

考えようによってはU値の性能が低くても暖かい地域なら耐えられるかな?と思っていますが、結露の問題はどうでしょう。そもそも結露はなぜ起きる?という観点から考えてみます。

結露

注文住宅で窓を選ぶ際、デザインはもちろんのこと断熱性・遮熱性を重視される方が多いですよね。それに付随して結露対策も万全を期すことでしょう。

一般住宅の窓であれば法令上の制限が低いため好きな窓を自由に選ぶことができますが、準防火地域エリアの場合は選択肢が極端に下がるだけでなく、窓の値段も驚くほど高くなります。

金額の比較表を載せた記事は冒頭に貼ってありますのでご参照ください。

なぜ起きる

そもそも結露はなぜ起きるのでしょうか?といっても情報がありふれていますので、ほとんどの方がご存じかと思います。冷たいコップの表面に水滴がつくのと同じ原理で、室温・ガラス表面温度・湿度の関係で結露が発生します。

例えば、室温20℃の部屋に5℃の冷たいお茶をガラスコップに入れた場合、部屋の湿度が50%以上であれば結露が生じることになります。

湿り空気線図

工学系の方であれば見たことがあるかと思いますが、湿り空気線図で求めることができます。

横軸が室温で、右斜めの曲線が湿度です。

横軸20℃で、50%と交わった位置を水平に左を見ますと、7℃前後で結露が発生することが分かります。つまり5℃の冷たいお茶だと結露が発生する、ということが分かる図となっています。室温が15℃であれば結露はギリギリ発生しない。といったところでしょうか。

結露の気温差と湿度関係

カビの原因である窓の結露- ウェザーニュース

細かいグラフ図に抵抗がある方は、ウェザーニュースのイメージ図を参考してください。

結露の対策方法

少々ややこしいグラフ図をお見せしましたが、結露が出ないようにするには3つの条件を考えれば良いわけです。

結露が発生しやすく頭を悩ませる季節は冬ですよね。標準的に室温は20℃とします。湿度は40%~70%が適正値と言われていますが、50%にしておきましょう。

そうなると窓の表面温度と室温の差を10℃以下に抑えれば結露は発生しません。

窓の表面温度を11℃~20℃にコントロールすれば良いわけです。

外気温が仮に5℃だとした場合、普通の単体窓であれば9℃程度なので、結露の発生です。これを防ぐためには断熱性の窓が必要不可欠ですが、複層ガラス?Low-Eペアガラス?トリプル?どこまでを求めればいいのでしょうか?

結露に係る計算式

先ほども申し上げましたが、一般住宅用の窓であれば高性能な窓が望めますので悩みは少ないです。問題は準防火地域の窓の高コストの中、どのくらいの性能を求めれば快適に暮らせるか?を焦点に充てています。

熱貫流率1.5を望めれば最高ですが、価格的にそうはいっていられません。防火性能の窓で比較的安価な商品の熱貫流率2.33を基準とします。

項目 数値
室温 20
外気温 5
熱貫流率 2.33
室内側熱伝達率 8.6

条件は上表のとおりと仮定し、求めたい数値はガラスの表面温度です。

計算式は簡単で、室温-熱貫流率÷室内側熱伝達率×(室温-外気温)で数値が出てきます。

U値(熱貫流率)が2.33の場合だと表面温度は約16℃です。

U値(熱貫流率) 表面温度
1.5 17.4℃
2.33 15.9℃
4.07 12.9℃

他のU値との比較表も一緒にご覧ください。

U値4.07はYKK AP 防火窓Gシリーズの複層アルミガラスで、最低限の仕様と考えています。

U値2.33の室温とガラス表面温度の差は約4℃と求められ、結露が発生する湿度は約80%あたりです。

U値4.07であれば差は7℃なので、結露が発生する湿度は約50%あたりになります。

東京都であればU値が2.33あれば結露に怯えなくても済むのではないかな?と考察されます。

ただ、外気温5℃というのは平均値なので最低値で計算しないといけませんね。

仮に氷点下0℃と仮定した場合のU値2.33の表面温度は14.5℃で室温との差は5.5℃です。その場合の湿度は75%以下に抑えないと厳しくなります。

あとは室温を20℃以上にした場合を考慮すると条件はさらに厳しくなります。

あくまで東京都での試算のため、寒冷地であればU値2.33だと不安が残ることは確かですし、U値4.07は東京都でも絶望的です。

しかし、寒冷地で防火窓にしなければならないケースは稀かと思いますので、U値1未満を狙った断熱性の高い窓を採用されることが多いかと思います。

湿度の悩み

湿度80%?

そんなに高くならないよ!と思う方は多いかと思いますが、寝室の場合は特に注意が必要です。

人が寝ている時は呼吸や汗で、結構な水分量が空気中に流れていきます。

さらに就寝時は暖房を消す方が多いので、室温は徐々に低下していきます。

室温が下がるということは飽和水蒸気量も下がるため、空気中に貯められる水分量が減ってしまいます。つまり湿度の上昇要因です。

起きている時間は部屋も暖かく湿度のコントロールは容易ですが、寝ている時は難しいもので湿度80%はすぐに到達してしまう領域で、結露を防ぐためには湿度をコントロールしなければなりません。

湿度コントロールに長けている建材は珪藻土(エコカラット等)や漆喰が有名ですが、ビニールクロス等であれば、東京都で窓のU値2.33は心許ないかもしれません。

こう考えると住宅というのは奥深いです。

窓の性能だけを上げても効果は発揮しづらく、調湿建材と組み合わせると結露に対する住宅性能が向上する訳です。全てを高性能に出来れば最高ですが、予算上不可能ですよね。

窓を向上させても湿度の問題はクリアできず。

断熱材を向上しても窓が低ランクであれば、暖かい・涼しい空間は望みにくいです。

建材との組み合わせを考え、相乗効果を狙い、家全体の性能を高めていくのは注文住宅の醍醐味です。

 

賃貸の結露対策

今住んでいるのは賃貸の物件になりますが、安いところなので窓の性能が著しく低いです。

そもそもペアガラスですらありません 笑

色々と結露対策に悩みグッズ等も購入しましたが効果は全く表れず、途方に暮れました。そんな我が家でも結露が消えてなくなった方法が一つあります。

原始的なやり方ですが、窓を開けて寝る 笑

窓全開

前述したとおり、結露が発生するのは室温・ガラス表面温度・湿度によって生じます。

であれば、その差を無くせば良いと考え、寝る前に窓を開けるという愚行に至ったわけです。

夜に窓を開けるとか、バカなの?寒いじゃん?死ぬの?と批判が聞こえてきそうですが、意外と快適なんです 笑

確かに部屋は寒くなりますが、当然ながら布団の中は暖かいです。寒い中こたつに入ってぬくぬくしているような感じに近く中毒性があります 笑

朝目覚めると部屋はひんやりしていますが、空気はカラッとしていて窓の結露は全くありません。今まで悩んでいた窓の結露対策がバカみたいに思えました。

もちろん起床と同時にストーブを即点火しますが、それは窓を開けていても閉めていても同じことです。それなら窓を開けて結露をゼロにした方が快適性は遙かに向上したと思っています。

それにストーブなら速暖性ですからね。

この経験を活かし。

断熱性も気密性もない賃貸物件に住んでいた経験を活かして、新しいお家でも冬の夜に換気をすれば、温度差・湿度の低下によって、結露に悩むことはないのでは?と楽観的に考えています 笑

希望はLow-Eペアガラス(U値2.33)で、これ以上高いグレードの窓を選択しなくても良いのかな?と自分を納得させています。

そもそも予算3,000万円ですし身分相応にしなければ・・・と強引に納得させています。

それすら叶わず、複層アルミガラス(U値4.07)になったらどうしましょう・・・笑

さて、愚行かもしれませんが、結露に悩んでいる方は一度窓を開けて寝てみてはいかがでしょう?

1階の窓は防犯上、危ないのでオススメできませんが2階以上で格子窓や侵入が出来ない窓であれば、やってみる価値はアリだと思います。

ただ、東京並みに冬が寒くなりすぎない地域限定ですけどね 笑