僕のおうち工房

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準防火地域の注文住宅 窓の価格が高すぎる。

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準防火地域の窓 価格と性能

私たちが購入した土地は都市計画法で定められている準防火地域に該当します。

元より東京都に家を建てようと思った時点で準防火地域の宿命からは逃れられません。

一般的な住宅と比べて費用が格段に上昇するわけですが、いったいどこまでの性能を求めるべきなのでしょう?

準防火地域

法令文書になりますが、防火地域又は準防火地域は、市街地における火災の危険を防除するため定める地域とする。と記載されています。

細かい内容は割愛しますが、今回は窓に焦点を当ててみようと思います。

まず、隣地境界線・道路境界線から一定以上離れていないと窓を防火耐性にしなければなりません。

一定以上というのは1階であれば3m、2階であれば5mです。

東京都のエリアでは、ほとんどが準防火地域以上に該当し住宅地も密集しているのが一般的です。

3m以上も離れた場所に窓を設置するなんて到底無理な話で、我が家に至っては50cmより狭めても良いですか?と相談したぐらいです 笑

なお、隣地境界等の土地探しの苦悩は以下の記事に書いてあります。

注文住宅の土地探し 苦悩の日々

 

業者の不正

一昔前の住宅用の窓は防火でも種類が多く、選ぶ楽しさなどがあったのですが2007年10月に防火材の不正疑惑が浮上しました。

報道発表資料:防火設備(樹脂製窓)の性能試験における不正受験等について - 国土交通省

2009年に国土交通省が発出した報道資料になります。

No 会社名 備考
1 (株)エクセルシャノン  
2 三協立山アルミ(株)  
3 新日軽(株) LIXILと合併
4 (株)PSJ 上記3社等の出資会社
5 H.R.D. SINGAPORE PTE LTD 一条工務店 関連

資料を読みますと上表の会社が不正にかかわっていたようです。

不正件数の総数が約6,000件で、うち約4,600件がエクセルシャノンだったそうです。

10年以上前の出来事ですが、不名誉な情報はインターネット上には永遠と残ってしまうので名誉挽回までの道のりが長くなってしまいますね。

なお、ここに載っていないYKK AP、不二サッシも防火の性能試験の基準に満たない商品を販売していたことが判明しています。

 

日本中のサッシメーカーが全て不正していたということでしょう 笑

消費者には選択肢が限られていますから、どこかで購入しないといけません。

当然、不正は見逃せない訳です。国土交通省もハードルを上げ続け厳しい規制になってしまいました。

その結果、防火窓の価格高騰により消費者は悲鳴をあげると。

もちろん、私も悲鳴を上げている一人です 笑

 

窓の種類

性能試験をクリアしないと商品を販売できなくなってしまったので、ラインナップは大幅に減少してしまいました。

メーカー 商品名 熱貫流率 防火 定価
LIXIL サーモスX 1.03 × 19万

防火戸サーモスX

1.58 52万
防火戸FG-L 2.33 34万
YKK AP APW331 1.55 × 17万

エピソードNEO

2.33 × 7万
防火窓G 2.33 24万
三協アルミ アルジオ 1.7 × 10万

防火窓アルジオ

1.75 18万

防火サッシF型

2.33 18万

※熱貫流率=(U値)(W/㎡・K)

 窓の規格=引き違い、W1690×H2030

この一覧表を作るの大変でした・・・笑

カタログから引っ張ってきましたが、定価等の誤差はご了承ください。

さぁ、見てください。この防火窓の価格の高さを!

2倍~3倍は当たり前なのに、熱貫流率は総じて2.33と低い部類になります。

このように比較してみるとLIXILの窓は頭一つ抜けているのが分かります。

当然、価格もですが 笑

三協アルミの防火窓アルジオと防火サッシF型の価格差がないのが不思議ですが、何なのでしょう・・・笑

時間があるときに調べてみます。

今のところYKK APしか考えていなかったので、三協アルミも候補に入れてもいいかな?と思えますね。

エクセルシャインも調べられたら上記の表に加えておきます。

 

熱貫流率

熱貫流率とは、熱の伝えやすさを表す数値となります。

数値が低ければ低いほど断熱性能が高く、窓から逃げる熱が少なくなります。

冬であれば暖房効果が高まり、夏であれば冷房効果が高まると思って構いません。

それでは改めて上表の見てみますと、防火窓の価格的に熱貫流率は2.33が望めればいいレベルのようです。

防火戸サーモスXの1.58の数値は非常にすごいですが、YKK APの防火窓Gと比べて約30万円も高いと対抗馬にすらなりませんね。

なお、あくまで定価なので値引き後の価格がどうなるかは不明です。

では、2.33と1.58の差はどの程度なのでしょうか?

計算式を引っ張ってきて数値を見てみましょう。

計算式

まず、条件を決めます。

項目 数値 備考
室温 20度 経済産業省 推奨温度
外気温 5度 東京都の最低平均気温
15度 20-5=15
窓の面積 20㎡ 延床100㎡の20%

気象庁|過去の気象データ検索 

空調 | 無理のない省エネ節約

条件が揃えば、U値である熱貫流率をかければ良いだけです。

(20度-5度) × 20㎡ × 2.33W/㎡・K × 1h=699

1時間に家の中から699Wが逃げることが求められました。

エアコンMAX消費電力を1,500Wと仮定すると半分近くの熱が逃げてしまう計算になります。30坪の住居をエアコン1基で計算するとですが。

 

それでは熱貫流率が1.58でしたら、どうなるでしょうか。

なんと474と求めることができました。

その差は225Wです。1時間で225W節約なので8時間エアコンをかけた場合1,800Wの節約が期待できる数値です。

一ヶ月の30日を乗じてみると54,000Wです!

電気代を27円/1kwhとしますと...

54,000÷1,000×27=1,458円の光熱費が削減できます。

1年で約18,000円

30年で540,000円の光熱費削減です。

地球にエコである。という観点からは立派な数値ですが、防火窓の価格差を比べてみるとどうでしょう・・・?

乱暴な計算ですが、YKK APの防火窓を㎡単価で出すと7万円です。

W1690×H2030で3.43㎡と求められるので単純に定価を割っています。

窓の平均が20㎡と仮定しますと140万円になります。

LIXILの防火戸サーモスXを計算しますと単価が15万円。全体で300万円

項目 金額 備考
光熱費の削減 54万円 30年間分
U値向上にかかる費用 160万円 防火窓G→防火戸サーモスX

あくまで東京都での試算結果になります。

生活環境や地域によっては大幅なズレが生じることはご了承ください。

私の場合は、窓のグレードアップを無理に行ってU値を上げる必要はないかな?と思っています。

そもそも窓に+160万円は現実的ではありませんし・・・笑

寒冷地の方の場合は金額の差が大きく変わりますので、ご条件に合うように計算されてみてはいかがでしょうか?

 

熱の損失だけ?

ここで一点お伝えすることがあります。

今回の試算はあくまで熱がどのくらい逃げてしまうのか?に焦点を当てています。

その他にも窓には結露という重要な要素があり、それを考慮していません。

結露が起こる原因は室温・窓の表面温度・湿度が大きく関係しています。

その記事はこちらにまとめました。→準防火地域の窓 結露対策を考える